調査料金はかさみ結婚費用は目減りする

探偵と組んで僕はとにかく彼女を調査した。洗いざらいということばがぴったりくる。
当然ながら調査料金はうなぎのぼりに上った。
独特の人ですよねと探偵たちは言った。

どうやら尾行されるのを楽しんでるようじゃないですか。
男性関係はなさそうで、よかったですねと励まされる。
そうだった。驚いたことに彼女は僕ひとすじだった。ひたむきとも言える真面目さで、まさに僕との交際に“取り組んで”いるのだ。
愛情からというよりは、よき妻よき母の予行演習をしているかに見える。良妻賢母になるというのは彼女にとっての命題らしい。
それもひとつの幸福のかたちなのだろうか。
が、探偵からの報告に僕は胸をかきむしられた。ストーカーである相手の男は妻子持ちだった。ふたりはいわゆる人目を忍ぶ交際だったらしい。
一方、陽の当たる場所の男である僕は、その日陰の男に心底の嫉妬と妬ましさ、そのうえ同情すら覚える。彼女が男にかけただろうことば。
そして温かい体を男に与えたと思うと気が狂いそうになった。そうまで執着させるほど彼女が男に与えたものとは。それほどの情けを僕以外の男にかけた彼女が許せない気すらした。
調査料金はかさんだ。
これでは結婚費用どころではない。
それにこんな気持ちのまま、結婚など到底できない。彼女の心を独占できないのに、生活だけ共にして何の意味があるだろうか。
信頼できない人と共にするには人生は長くそして短い。が、困ったことに彼女以外の人との人生は僕には考えられなくなっていた。