探偵からの報告に苦悩する

なかなか危なっかしい人ってことですよ。
探偵は立ち上がる。
よくお考えになった方がいいと思いますよと言い残し、探偵は去って行った。

あとに残された僕は考え込んだ。
結婚して守ってあげるというのもひとつの手ではあった。
が、例えば新居に僕が帰宅すると、彼女はストーカーに殺害された後かもしれない。血まみれになり変わり果てた姿で転がっているおそれすらあるのかもしれない。

マンガを読んでいたあの呑気な横顔にその危険を告げるというのもあり得ない。
すっかり僕が彼女の過去を知ってしまったと告げることとなる。
彼女は傷つき、僕から去ってしまう。

幾日か悩んだ。
見もしない男と彼女の悩ましい姿が浮かび、苦しめられた。
ストーカーするほど濃密な時間を過ごした男と女。
僕の嫉妬には際限がないような気がした。例え彼女と結婚したとしても、その男に一生付きまとわれるようなものだ。ロマンティストである彼女のことだ。
現実に生活を共にする男より、自分の愛おしい過去としてその男を美化してしまう可能性すらある。いつもふたりの間に横たわる見えない男。その存在に苦しめられ続けるなんて、僕には不可能に近い。
いっそ別れた方がいいのかもしれない。
が、そうすれば彼女とは自然消滅となるのだろう。こうまで愛情を抱いた女性は初めてだというのに、そういう気持ちもなにも理解されないまま、永久に僕の前から消えてしまう。
理解されないままきてしまったが、これほど身近に感じた人はいない。手を伸ばせば届くほど、彼女の気持ちや心の動きを感じ取って生きていた自分に改めて気づく。
辛いことや苦しいことも、彼女が理解してくれたらそれで報われる気すらした。大変だったねと心配してくれつつも、彼女は隣でマンガを読んでたりするのだ。呑気なもんだなと僕は思うのだろう。
幸福のかたちは人それぞれだ。